化粧品に欠かせない界面活性剤について皆さんどれほどご存知でしょうか?
界面活性剤という単語は聞いたことがあるかと思います。
化粧品によっては界面活性剤フリーと謳っているものもあり、何となく良くない成分というイメージがあるのではないでしょうか。
今回はそんな何となくイメージが良くない界面活性剤について正しく知っていただくために、元化粧品開発者の視点から界面活性剤のことをお伝えしたいと思います。
化粧品の選び方に関しては、全成分表示から化粧品を選ぶ方法もお伝えしていますので、こちらもぜひご覧ください。
界面活性剤のキホン
まずは界面活性剤の基本的な性質について簡単にまとめてみました。
界面活性剤の構造
界面活性剤は水に溶けやすい親水基と、水に溶けにくい(油に溶けやすい)疎水基(親油基)からできています。
この親水基と疎水基という異なる性質が一つの分子の中に共存しているため、界面活性剤特有の性質を発揮させます。
界面活性剤の二大性質
界面活性剤には大きく二つの性質があります。
界面吸着
界面とは混じりあわないものが接する境目のことです。
水と油が接する境目や水と空気が接する境目をイメージしていただくと分かりやすいと思います。
疎水基が水と出来るだけ接しない様にするため、界面活性剤は界面に吸着します。
そして界面活性剤が界面に吸着すると界面張力(表面張力)が低下します。
界面張力が低下するということは、界面を隔てる力が弱くなることを意味するため、簡単に言えば界面を構成する二つの成分が混ざりやすくなります。
例えば水と油を一緒にして混ぜても少しすると分離して混ざり合いませんが、そこへ界面活性剤を入れて混ぜると、白く濁りすぐに分離しなくなります。
界面活性剤のおかげで二つの成分が混ざりやすくなったのです。
後ほど説明しますが、これが乳化作用です。
乳液やクリームを作るのに非常に重要な技術になってきます。
自己集合
界面活性剤は液中で濃度や温度によって様々な形に集合します。
例えば、界面活性剤をある濃度で水に溶かすと水に溶けにくい疎水部が集まり、外側を水に溶けやすい親水部にしたミセルという会合体を形成します。
疎水基が水に溶けにくいということは、水と接触することを好まないことになります。
なので、水中では疎水基はなるべく水と接触しないように疎水基同士で集まることを好み、ミセルの様な会合体を形成することになります。
界面活性剤の化粧品への必要性
では、化粧品にはどうして界面活性剤が配合されているのでしょうか。
スキンケア製品を中心にその役割をまとめました。
より詳しく知りたい方は日本界面活性剤工業会のHPを参照されるのもいいと思います。
洗浄成分として
ウォッシングやクレンジングに配合されている界面活性剤は洗浄成分として主に配合されます。
先ほどお伝えした界面活性剤の界面吸着の性質のため、汚れに界面活性剤が吸着します。
界面活性剤が吸着した汚れは水と混ざりやすくなるため、容易に汚れを落とすことが出来るようになるのです。
また、ウオッシングクリームやボディソープの様な泡立つ製品は水と空気の界面にも界面活性剤が吸着します。
そのため水と空気が混ざりやすくなり、さらに泡の膜に界面活性剤が並び膜を強くすることで、泡が壊れにくくなり泡立ちます。
乳化剤として
乳液やクリームに配合されている界面活性剤は主に乳化剤として配合されます。
乳化とは混ざり合わない複数の液体を均一に混ぜることを言います。
乳液やクリームでいえば、水や水溶性分とオイルなどの油性成分を均一に混ぜるのが乳化ですね。
この乳化のおかげで、水溶性のうるおい成分やオイルの保湿成分を一緒に塗ることができ、心地よい特有のテクスチャーを演出することができます。
食品でもこの乳化技術は一般的です。
例えば、振って使うタイプのドレッシングは界面活性剤が配合されず、水と油だけで作られていますが、そこにレシチン(卵黄の成分)という界面活性剤が加わり、水と油が混ざるとマヨネーズになります。
界面活性剤と聞くと洗剤のイメージが強いですが、食品などの製品にも様々な界面活性剤が使われています。
可溶化剤として
化粧水の様な透明な製品に配合されている界面活性剤は可溶化剤の役割をしています。
界面活性剤が自己集合することでミセルを形成することをお伝えしましたが、このミセルの中に水に溶けない成分を入れることが出来ます。
これが可溶化です。
化粧品の香料は基本的に水に溶けないため、香料を界面活性剤で可溶化させて化粧水に香りを付けます。
乳化と似ていますが、乳化は油を均一に分散させているのに対して、可溶化は完全に溶かしています。
そのため、乳化化粧品は白濁しますが、可溶化化粧品は透明です。
他にもいろいろと異なる点はありますが、そこまで気にする必要はありません。
界面活性剤と洗浄剤、乳化剤、可溶化剤の違いとは
ときどき、界面活性剤と乳化剤は何が違うか?といった疑問が聞かれます。
先ほどお伝えした通り、界面活性剤は様々な用途で用いられます。
乳化剤や可溶化剤と名前を変えて使われますが、基本的にどれも界面活性剤の事を指します。
用途によって呼び方が変わっているだけですね。
ただ、それぞれの用途に適した界面活性剤が選択されているので、洗浄剤でよく使われる界面活性剤、クリームでよく使われる界面活性剤等の傾向はみられます。
界面活性剤はお肌によくない?
界面活性剤はよく肌に悪いという印象を持たれますが、実際はどうでしょうか?
元化粧品開発者の視点からすると、そんなに気にしなくていいと考えます。
以降、私がそう考える理由をまとめていきます。
界面活性剤の種類による
よく界面活性剤と一括りにして悪者にされたりしますが、界面活性剤の中にも安全性の非常に高いものから皮膚刺激が強いものまで非常に多岐に渡ります。
もちろん、界面活性剤によってはタンパク質を変性させたり、細胞間脂質を乱したりするものもありますが、一方で肌を保湿してくれるものすらあります。
そのため、一概に界面活性剤をすべて肌に対して悪者にするのは乱暴な結論だと私は思います。
人の肌の強さによる
肌の強さは人によって様々です。
一般的な肌の人ではなんでもないようなことでも、肌の弱い方は少量の界面活性剤で刺激を感じたり、炎症を起こしたりする方もいます。
ただ、そのような方は界面活性剤以外の成分でも同じような事が起きたりします。
それなのに界面活性剤だけをすごい悪いものとして扱うのもどうかなと思います。
配合量、使用量による
どの程度の界面活性剤が肌に付くかで影響の有無が大きく変わります。
極端なことを言えば、無害と思われる水も過剰に飲めば体に害を及ぼしますよね。
界面活性剤だって、多量に肌に塗れば悪い影響を及ぼしますし、少量であれば何ら問題ないものも多くあります。
そして、基本的に界面活性剤は化粧品に配合すると、べたつきやすくなる等化粧品の使用感を悪化させます。
そのため、化粧品メーカーはより魅力的な商品を開発するために、出来るだけ少量の界面活性剤で化粧品を作るように心がけます。
もちろん皮膚への影響も少なくするためという目的もあります。
そのため、一般的な化粧品を普通に使っていれば、界面活性剤の悪影響を受けることはほぼないと考えます。
ただし、ウォッシングやクレンジングの様な洗浄目的の化粧品は界面活性剤が大量に配合されており、汚れを落とそうと過剰に使用すると必要な皮脂や肌の中の保湿成分まで洗い流してしまうため、肌へのダメージが大きくなります。
そういった意味では界面活性剤は悪さをすると言えますが、それは想定される使用量を超えており、界面活性剤だけを悪者とするのは酷ではないでしょうか。
まとめ
今回は界面活性剤の基本的な性質や用途、肌への影響についての持論をまとめてみました。
ご説明した通り、様々な化粧品で界面活性剤は大活躍しています。
よく界面活性剤フリーと書かれたものがあったりしますが、よほど肌が弱くなければ敢えてそういった化粧品を選ぶ必要もないと考えています。
そもそも界面活性剤フリーと謳っていても、結構グレーな製品も見られます。
今後無添加化粧品についてもまとめてみたいと思います。
ぜひ正しい知識を身に着けて、ご自身に合った化粧品を選んでいただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。