肌へのやさしさをウリにしている化粧品などで、よく”パラベンフリー“や”ノンパラベン“という単語を見かけます。
そのため、パラベンは肌に良くないと思われる方も多いかと思います。
ですが、実際は”パラベンフリーは肌に優しい”とは言い切れないのです。
そこで今回はパラベンやパラベンフリーについて、元化粧品開発者の立場からお伝えしたいと思います。
この記事でパラベンについて正しい知識が得られるようになります。
ぜひ最後までご覧下さい。
パラベンは最もポピュラーな防腐剤
パラベンは正式には”パラオキシ安息香酸エステル“という名前で、別名”パラオキシベンゾエート“なので、略してパラベンと呼ばれます。
防腐目的で多くの化粧品に配合されています。
化粧品は微生物が喜ぶ水分や栄養を沢山含んでいて腐りやすいので、何かしらの方法で防腐が必要になります。
少量で多くの微生物などに効果を示す(抗菌スペクトルが広い)ので、最も使われている防腐剤と言っても過言ではありません。
ちなみにパラベンは総称なので、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンと様々な種類があります。
メチルパラベンが最もメジャーなパラベンで、パラベンフリーでない場合はほぼすべてのアイテムに配合していました。
パラベンは化粧品界で超メジャーな防腐剤。
パラベンは安全性の高い成分
パラベンは防腐剤として非常に重要な成分ですが、”パラベンフリー“という単語を見ると危険な成分と思われる方もいるかもしれません。
ですが、パラベンは基本的に安全性が高い成分だと言われています。
大まかな理由は以下の3点です。
このようにパラベンに関しては安全性の知見が多く、実績もバッチリなので、基本的に安全な成分と考えて問題ありません。
大きなトラブルもなく、長い間ポピュラーな防腐剤として汎用されてきました。
パラベンは使用実績も十分あり、安全性の高い成分と考えられている。
パラベンフリーはどうしてあるのか
基本的に安全であると考えられているのに、なぜパラベンは悪者にされ、パラベンフリーというものがあるのでしょうか。
その大きな理由としては2つが考えられています。
昔の化粧品のルールでは、特定の成分は
「体質によってごくまれにアレルギー等の肌トラブルを起こす恐れのある成分」
として、成分の配合を表示しなければいけませんでした。
この特定の成分を”指定表示成分“と言っています。
今はこのルールはなくなり、すべての成分を表示する”全成分表示”のルールになっています。
そして、当時の指定表示成分にパラベンが含まれていました。
ですが、現在はパラベンの安全性に関する知見も十分あるため、指定表示成分の懸念も払しょくされています。
また、昔はパラベンが”環境ホルモン“であると疑われていたこともありました。
環境ホルモンとは体内で、本体のホルモンの働きを乱して悪影響を及ぼす物質のことを指します。
環境ホルモンが話題となった時に、パラベンもその一種として疑われました。
ですが、環境ホルモンとしてパラベンが人体に悪影響を及ぼす報告は今のところありません。
このように、昔はパラベンの安全性に関して懸念されていたこともありました。
そして、この懸念に対応するため、化粧品メーカーがパラベンフリーの化粧品を販売し始め、それがパラベンを悪者にする風潮に拍車をかけたと考えられています。
パラベンは何となく肌に悪そう、というイメージだけが世間に広まってしまったようです。
過去の懸念からパラベンフリーが売り出され、今もパラベンは良くないイメージが残っている。
パラベンフリーが良いとは限らない
パラベンは基本的に安全と考えられますが、アレルギー反応などの肌リスクは存在します。
パラベンだけでなく、ほとんどの化粧品成分は少なからず肌へのリスクはあります。
そのため、「とりあえずパラベンフリーを選んでおけば肌に優しいケアができる」と思われるかもしれません。
ですが、実はパラベンフリーのアイテムが肌に優しいとは言えず、むしろ肌へのリスクが高いこともあり得ます。
なぜならば、パラベンフリーの場合、パラベンの代わりの防腐剤がより高濃度で配合されることが多いからです。
例えば、パラベンの代わりとしてよく使われるフェノキシエタノールはパラベンよりも防腐力が弱いため、より高濃度で配合しなくてはいけません。
防腐剤の濃度が高ければ、その分肌へのリスクは当然高まります。
さらにフェノキシエタノールだけで防腐効果が十分でない場合、そこに他の防腐剤や防腐力のある保湿剤も多く配合されることもあります。
パラベンでは少量で済むのに、パラベンフリーにするために色々な防腐成分を配合しないと、防腐力試験に合格できず苦労しました。
このように、パラベンフリーとして売り出すために、逆にパラベン以上に防腐剤を配合され、肌リスクを高めることがあります。
以上の理由から、パラベンフリーのアイテムがむしろ肌へのリスクが高いこともあり得ると言えるのです。
パラベンフリーには他の防腐剤が配合され、パラベン以上に肌リスクが高い場合もある。
結論:基本的にはパラベン配合アイテムでOK
結論としてはこれまでお伝えした通り、
パラベンは安全性が高いと考えられる
パラベンフリーのアイテムは他の防腐剤が多い懸念がある
という理由から、基本的にパラベン配合アイテムを選べば問題ないと考えます。
ただし、当然ながら安全性に関しては個人差もあります。
パラベンだけ特異的に肌が反応してしまうこともあり得ます。
そのため、パラベン配合でやたらとピリピリ感を感じたり、肌荒れするようであれば、パラベンフリーも検討すべきです。
ですが、その場合も自分で判断するのではなく、皮膚科で相談することをお勧めします。
下手に自分だけで対処しようとすると、逆に症状を悪化させる恐れがあります。
肌を健やかな肌を保つための化粧品が、逆に肌状態を悪くしてしまわないように、賢いアイテム選びをしていただきたいと思います。
この記事が皆さんの化粧品選びの参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。