みなさんは化粧品の成分についてどれくらいご存知でしょうか。
イメージの良いエキスやヒアルロン酸などの訴求成分については、何となく知っているかもしれませんね。
一方で、もっと大事で基本的な化粧品の成分に関しては、あまり詳しくないという方がほとんどかと思います。
ですが、化粧品の基本的な成分について知っていれば、もっと賢く化粧品を選ぶことが出来ると思います。
そこで、今回は化粧品の成分の中でも最も基本的な保湿成分である、多価アルコールについて説明したいと思います。
ぜひ最後までご覧下さい。
多価アルコールは保湿剤の主役
多価アルコールはポリオールとも呼ばれ、化粧品の保湿剤として無くてはならない成分となっています。
保湿剤と言えば、かなりの割合でこの多価アルコールが使われています。
まずは、この多価アルコールの基本的な特徴をお伝えします。
多価アルコールは無色透明なとろみのある液体
多価アルコールの多くは無色透明でとろみのある液体です。
水よりちょっと粘度が高い程度のものから、ハチミツのようにネバっとしたものまでさまざまあります。
このとろみ感が化粧品のしっとりとした感触を与えてくれますし、時にはべたつき感にも影響を及ぼします。
多価アルコールは水とくっつく
ヒドロキシル基という水と馴染む分子があるため、多価アルコールは水とくっつく性質があります。
ヒドロキシル基を持っているとアルコールと呼ばれ、複数個もっているので多価アルコールと呼ばれます。
そして、水とくっついて馴染んでくれるので、水に溶けるわけです。
この水とくっつく性質のおかげで、多価アルコールの保湿能力が発揮されます。
多価アルコールは肌を保湿する
水とくっついた多価アルコールは、肌にある程度とどまることで保湿してくれます。
水だけでは、肌の奥に吸収されたり、蒸発してしまいますが、多価アルコールが肌にとどまることで、化粧品の水分も肌にとどめてくれます。
この保湿効果が多価アルコールの最も大切な役割になります。
この効果がめちゃくちゃ大事で、化粧品の役割りの半分はこの保湿だと言っても過言ではないでしょう。
多価アルコールはいろいろな種類がある
そして、多価アルコールと一言で言ってもいろいろな種類があります。
最も代表的なものがグリセリン、次いでBG(1,3-ブチレングリコール)かと思います。
大体どの化粧品にもどちらか、または両方が配合されています。
それ以外にも様々あり、一般的な多価アルコールの一例を以下に示します。
- グリセリン
- BG
- ジグリセリン
- DPG
- PG
- プロパンジオール
- ペンチレングリコール
- 1,2-ヘキサンジオール
これ以外にも、広義には糖アルコール系やポリエチレングリコール系などもありますし、他にも原料メーカーが独自に開発した成分などもあります。
とにかくいろいろな種類の保湿剤が存在していますが、まずはメジャーな上記の成分を覚えておくのがいいと思います。
それぞれ、保湿力や感触、べたつきやすさ、原価などが異なるので、化粧品開発者はそのバランスを考えながら選んで使います。
グリセリンやジグリセリンはこってりしていて、BG、DPG、PG、ペンチレングリコールや1,2-ヘキサンジオールはあっさりという感じで分けられます。
防腐力があるものもある
BGやペンチレングリコールなどの2価アルコールと呼ばれる多価アルコールには、防腐力もあります。
防腐力とは簡単に言えば、腐らなくさせる力です。
この防腐力があるから、化粧品は雑菌で汚染されることなく使い続けることができます。
パラベンフリーを訴求している化粧品は、これらの多価アルコールで防腐力を補うことが多いです。
保湿もするけど、雑菌の繁殖も抑えてくれる優秀な成分です。
多価アルコールの化粧品中の役割り
では、多価アルコールは化粧品の中でどのような役割をしているのでしょうか。
ざっくり分けると次のような働きがあります。
- 肌を保湿してしっとりさせる
- 防腐力を持たせる
- 他の成分を均一に溶かす
- 洗浄剤では泡質を改善させる
- 温感ジェルの基剤となる
それぞれ詳しくお伝えしていきます。
肌を保湿してしっとりさせる
肌を保湿してしっとりさせるのが、多価アルコールの最も大切な働きです。
多価アルコールが配合された化粧品を塗ると、実際に肌の水分量が増加しますし、しっとりとした感触も得られます。
保湿は化粧品の基本的な役割であり、肌にとっても非常に重要であるため、多価アルコールは化粧品にとってなくてはなりません。
肌にとって大敵の乾燥を防ぐ、重要な成分です。
防腐力を持たせる
先ほどお伝えした通り、一部の多価アルコールには防腐力があります。
そのため、肌を保湿しつつ、防腐力を高める働きをしてくれます。
これによって、刺激が懸念されるパラベンの配合量を減らしたり、パラベンフリーの化粧品を作ることに役立っています。
ただし、防腐力のある保湿剤は大量に配合すると肌への刺激になる可能性もあるので、やたらめったら入れることはしません。
他の成分を均一に溶かす
多価アルコールは保湿以外にも、他の成分を溶かすために使われたりもします。
化粧品の成分の中には、水に微妙に溶けにくいものもあります。
そういった成分を、多価アルコールは簡単に溶かしてくれたり、安定的に配合させる働きもしてくれます。
一度多価アルコールに溶かしてから水に溶かす、といった使い方もします。
洗浄剤では泡質を改善させる
グリセリンなど多価アルコールの一部は泡質の改善にも役立ってくれます。
洗浄剤にある多価アルコールを配合すると、泡の膜が強くなります。
その結果、泡が壊れにくくなり、モチっとした弾力のある泡になります。
洗顔クリームなどにも、水溶性保湿剤はなくてはならない成分です。
ものによっては逆に泡を壊してしまうものもあるので、何でも入れれば良いというわけではないです。
また、洗浄剤自体は洗い流されてしまいますが、洗いあがりのしっとり感も付与してくれます。
温感ジェルの基剤となる
多価アルコールは水と混ざると発熱する性質があります。
ただ、一般的な化粧品の使用量では全く発熱を感じられません。
水の配合量が少なく、多価アルコールが大量に配合されたときのみ、肌への塗布時に温かさを感じられます。
この性質を利用したのが、温感ジェルです。
温感ジェルが肌の上に乗ると、肌の水分と反応して発熱する仕組みです。
主に大量のグリセリンとカルボマーなどの増粘剤の組み合わせで作られます。
こういうアイテムですね。
全成分表示の最初がグリセリンになっていて、大量に配合されているのが分かります。
ただし入れすぎはべたつく原因になる
多価アルコール剤のおかげで化粧品にとって重要な保湿力や防腐力が発揮されますが、入れすぎるとべたつきの原因となってしまいます。
そのため、保湿力を上げつつ、べたつきなどの嫌な使用感をいかにして抑えるかが、化粧品開発者の腕の見せ所となります。
保湿力があるからって、入れまくればいいってものではないです。
おすすめの多価アルコールはグリセリン系
いろいろな保湿剤がありますが、保湿力の観点から言えば、グリセリンやジグリセリンといった、グリセリン系の保湿剤がおすすめです。
なぜならば、
- 保湿力が高い
- 安全性が高い
といった理由があるからです。
BGやDPG、ペンチレングリコールといった2価アルコールも保湿力はありますが、グリセリン系の方が保湿力が持続するという報告があります。
また、グリセリン系は防腐力がない分、肌へのリスクも少なく、より安心して使える成分になっています。
その他の保湿剤がダメ、というわけではありませんが、グリセリン系の保湿剤が多いものが個人的にはおすすめです。
ジグリセリンはグリセリンより原価が高いですが、保湿力もその分高く、意外とべたつきにくいので、よりおススメです。
全成分表示を見たときにグリセリンやジグリセリンが前の方に記載されていれば、多く量配合されていることになるので、ぜひ一度チェックしてみてください。
あともう一つ、グリコシルトレハロースという成分もおススメです。
こちらはデンプン由来の保湿剤成分で、グリセリンなどと比べると、そこまで一般的ではありません。
ただ、保湿力が高いだけでなく、肌荒れ抑制効果もある高機能な成分です。
しっとりするのにべたつかない、という使用感も良さもあります。
化粧品の性能を底上げしてくれる成分なので、こちらも全成分表示をチェックしてみて下さい。
少し高い成分ですが、保湿力と使用感のバランスが良いので好んで使っていました。
例えば、無印良品の乳液に配合されています。
保湿力が良いことなどが口コミに書かれていますね。
まとめ
多価アルコールは保湿剤の中でも最もオーソドックスな成分です。
化粧品にはなくてはならない成分なので、その役割や種類はある程度知っておくと、化粧品選びに役に立つと思います。
今回の記事が皆さんの化粧品選びの役に少しでも立てたら嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
同じ保湿剤でも、肌の水分蒸散を防ぐオイルについても別記事でまとめています。
化粧品のオイルに関して詳しくは、
この「【元化粧品開発者が解説】化粧品の保湿成分とは?-オイル編-」も是非ご覧ください。