みなさんは「リポソーム」についてどれくらい知っていますか??
化粧品を選んでいると、何となく聞いたり見たりしたことがある単語の一つではないでしょうか。
特に高級ラインのアイテムに配合されることが多く、良さそうなイメージはあるかと思います。
ただ、リポソームの正体や、その効果については良く分からない、という方もまだ多い印象です。
そこで、今回は某化粧品メーカーで開発業務に従事していた経験を活かして、リポソームの解説を簡単にしてみたいと思います。
この記事で、リポソームのことや、リポソーム配合化粧品の魅力がより詳しく分かるようになると思います。
ぜひ最後までご覧ください。
リポソームは特殊構造で多機能
まずはリポソームについて、できるだけ簡単にお伝えしたいと思います。
リポソームの構造
リポソームとは、おもにリン脂質で構成された脂質二重膜で作られた球体のことを言います。
いきなり難しい単語が出てきて混乱するかもしれませんが、もっと簡単に言えば、人の肌にもある成分で出来たカプセルです。
リン脂質は人の肌の細胞にも存在していますし、卵黄や大豆にも含まれる成分です。
生物や植物にとって、とても重要なんです。
少し詳しく説明すると、リポソームの成分のリン脂質は、一般的な界面活性剤と同じように、水に馴染む部分(親水基)と馴染まない部分(疎水基)、両方を持つ構造をしています。
ですが、一般的な界面活性剤と異なり、リン脂質は水に馴染みやすい親水基が1つ、水に馴染みにくい疎水基は2つ持った独特の構造をしています。
この疎水基が2つ、というのが非常に大事になってきます。
この独特の構造を持ったリン脂質が水中でたくさん集まると、水と馴染みやすい親水基は親水基同士、水に馴染みにくい疎水基は疎水基同士が集まります。
すると、図のように、親水基が集まった層と、疎水基が集まった層に分かれて集まるようになります。
これがもっと集まると、カプセルの様な球状になって、リポソームとなります。
リン脂質から出来ていて、親水基が集まった層と、疎水基が集まった層の二層あるので、脂質二重膜というわけです。
リポソームはリン脂質で作られることが多いですが、リン脂質と似た構造の成分で作られることもあり、色々な種類のリポソームが存在しています。
実際には、このリン脂質の膜に少量のコレステロールやフィトステロール類が添加され、安定性を高めています。
より詳しく知りたい方は、リポソームの文献がネット上で見られますので、こちらもご覧ください。
リポソームの特徴
ちょっと変わったカプセルのリポソームですが、その独特の構造から次の特徴があります。
- カプセルに美容成分が入れられる
- 肌と似た構造で、馴染みが良い
- 化粧品への配合は難しい
カプセルに美容成分が入れられる
リポソームはカプセル状なので、この中に美容成分を入れることが出来ます。
リポソームを配合している化粧品では、リポソームに色々な成分を入れ、各社差別化を図ったりもしています。
肌と似た構造で、馴染みが良い
先ほどお伝えした通り、リポソームは脂質二重膜で出来ています。
そして、実は肌の中にも似たような二重膜構造(ラメラ構造)が存在しています。
そのため、リポソームは肌との馴染みが、とても良いと言われています。
化粧品への配合は難しい
実はリポソームを化粧品へ配合するのは難しいです。
独特な構造をしているリポソームは壊れやすく、化粧品の中でも安定に保つのが難しいと言われています。
そのため、リポソームを配合している化粧品は意外と少なく、かなりちゃんとした技術を持ったメーカーだけがリポソーム配合化粧品を販売できます。
リポソームのメリット
リポソームの特徴から得られるメリットは以下の通りです。
- リポソーム内の美容成分の浸透力が上がる
- リポソーム内の美容成分の安定性が上がる
- リポソーム自体が肌の上に保護膜を作る
リポソーム内の美容成分の浸透力が上がる
リポソームに美容成分を入れてあげると、その成分の浸透力が上がります。
このメリットは、特に水に溶けやすい成分で活かされます。
なぜなら水に溶けやすい成分は、肌が本来持つバリア機能によって、なかなか浸透しにくいためです。
それが、リポソームに入れてあげると、リポソーム自身が肌と馴染みやすいため、一緒に水に溶けやすい成分も肌に馴染んでくれます。
そのため、美容成分の浸透力を上げる目的で、リポソームを配合されている化粧品もあります。
リポソーム内の美容成分の安定性が上がる
リポソームに美容成分を入れておくと、美容成分の安定性が上がります。
化粧品の中には、様々な成分が混ざっていて、相性の悪い組み合わせもあります。
成分同士の相性が良くないと、成分が分解などしたりして、本来の性能を発揮できなくなります。
そこで、リポソームの中に美容成分を入れてあげると、相性の悪い成分同士の接触を避け、安定性の向上を図ることができます。
ビタミン系の成分は、安定性が悪いものがあるので、このリポソームを利用されたりします。
リポソーム自体が肌の上に保護膜を作る
リポソームは単に美容成分を入れるカプセルとして働くだけではありません。
リポソーム自体も、肌の上で保護膜を作ることが最近明らかになってきました。
コーセーの研究によれば、リポソームが肌の上に塗布されると、肌に似た構造を形成していることが観察されています。
このリポソームの肌上の構造によって、肌のバリア機能を強くすることが期待されます。
リポソームの研究と言えば、コーセーがやはり抜きんでていると思います。
メリットまとめ
リポソームのメリットは伝わりましたでしょうか?
リポソームに美容成分を入れて浸透力や安定性を上げてくれたり、リポソーム自身もスキンケア効果を発揮したりと、様々なメリットがあります。
要するにすごいカプセルなんです。
リポソームによって、化粧品の可能性がさらに広がったと言っても過言ではないと思います。
これから化粧品を選ぶ際にはリポソームもチェックしてみて下さい。
リポソームとナノカプセルの違い
リポソームと同じような働きをするもので、ナノカプセルという単語もよく見かけるかと思います。
これらの違いをご存知でしょうか。
実は、リポソームとナノカプセルは、ほぼ同じものなんです。
では、両者の名前はどのように使い分けられているのでしょうか。
それは、リポソームの基準をクリアしたかどうかです。
リポソームは化粧品の中に安定的に配合するのが難しく、また、浸透促進効果もあるため、リポソームの安定性や安全性の基準が設定されています。
そのため、「リポソーム」と表示するには、これらの基準をクリアしていると証明する必要があります。
しかし、この基準をクリアしたり、クリアしていることを証明するのには、技術力や資金力が必要となります。
なので、リポソームっぽいけど、リポソームと表示できないので「ナノカプセル」と表示している訳です。
リポソームと表示するには、非常に大変なんですね。
それだけ信頼できるものの証でもあります。
初めてリポソームを化粧品に配合したコーセーも、かなり熱心に研究をしていたようです。
コーセーの方がまとめられた文献もあるので、より深く知りたい方は、こちらもご覧ください。
以上のことから、リポソームとナノカプセルは似てるけど違う、ということが分かりましたでしょうか。
どうせ選ぶなら、厳しい基準をクリアした「リポソーム」を選んでいただきたいと思います。
リポソーム配合のおすすめ化粧品
リポソームが配合されたおすすめの化粧品をいくつかピックアップしてみました。
気になるアイテムはぜひチェックしてみてください。
コスメデコルテ リポソーム アドバンスト リペアセラム
リポソーム配合の化粧品の中で、王道中の王道の美容液です。
リポソームと言えば、コーセー。
コーセーと言えば、リポソーム。
と言っていいほど、リポソームはコーセーが強いのではないでしょうか。
そのコーセーから発売されている、リポソームの美容液は確実におススメです。
全成分表示を下に載せましたが、この美容液の最大の特徴は、リポソームの主な構成成分の水添レシチンの多さです。
水、BG、グリセリン、水添レシチン、DPG、PCA-NA、アセチルグルタミン、エクトイン、シラカンバ樹液、セリン、テンニンカ果実エキス、トコフェロール、ヒドロキシプロリン、ビフィズス菌培養溶解質、加水分解ヒアルロン酸、加水分解酵母タンパク、酵母培養液、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、カルボマー、キサンタンガム、コハク酸2Na、セラミドNG、ダイズステロール、フィトステロールズ、水酸化Na、フェノキシエタノール、安息香酸Na、香料
水、BG、グリセリンに続いて4番目の位置に水添レシチンがきています。
全成分表示は基本的に成分の多い順に記載されているので、水添レシチンはこの美容液の中で、4番目に多い成分ということになります。
これはかなりの量の水添レシチンが配合されていて、リポソームも大量に入っていると考えられます。
コスメデコルテの商品ページでも、1滴(0.1mL)に1兆個のリポソームが入っていると謳っています。
とにかく、とんでもなくリポソームが入っていることが分かります。
そのため、リポソームの良さを体感したければ、まずはこちらのアイテムから始めてみるのがベストではないでしょうか。
コスメデコルテ リポソーム アドバンスト リペアセラムに関して詳しくは、
この「【元化粧品開発者の成分解析&使用レビュー】コスメデコルテ リポソーム アドバンスト リペアセラム」も是非ご覧ください。
コスメデコルテ リポソーム アドバンスト リペアクリーム
こちらは、先ほどの美容液と同じコスメデコルテのクリームです。
リポソームは1gに1兆個と、リポソーム自体の量は美容液よりも少ないですが、それでも十分な量が配合されています。
美容液が異常に多くて見劣りするかもしれませんが、クリームのリポソームも十分多いです。
こちらのクリームの特徴は、リポソーム以外にオイルにもあります。
コクのある水添ポリデセンやメドウフォーム油をメインとし、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリルや、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)といったクセのある機能性オイルで独特のエモリエント効果を出しています。
実際に使ってみると、コクのある使用感で、馴染んでくると柔軟でハリ感のある膜で包まれます。
そして、肌が柔らかくなり、すべすべとに仕上がります。
とにかく使用感が良いです。
リポソームがただ配合されたクリームではなく、そのほかの成分にもこだわりが感じられ、完成度が高いクリームでした。
リポソーム配合のクリームをお探しでしたら、ぜひこちらのクリームがオススメです。
コスメデコルテ リポソーム アドバンスト リペアクリームに関して詳しくは、
この「【元化粧品開発者の成分解析&使用レビュー】コスメデコルテ リポソーム アドバンスト リペアクリーム」も是非ご覧ください。
アスタリフト ザ セラム マルチチューン
こちらは富士フイルム アスタリフトの医薬部外品のリポソーム美容液です。
実は富士フイルムもリポソームの研究を行っており、医薬品へも応用されています。
この美容液の特徴は、リポソーム+有効成分ナイアシンアミドの組み合わせです。
リポソームには、ビタミンB6とビタミンC誘導体が含有しており、浸透力をアップさせています。
さらに、有効成分としてナイアシンアミドが配合されているのがコスメデコルテとは、大きく異なる点です。
ナイアシンアミドは医薬部外品の有効成分として、美白や抗シワの効果が認められており、近年非常に多くの化粧品に配合されるようになりました。
また、肌荒れ抑制や皮脂の抑制効果もあり、肌にとってメリットの多い成分です。
そして、医薬部外品の有効成分であるため、効果が期待できる量が配合されているのが確実です。
そのため、リポソームの効果も欲しいけど、美白や抗シワもケアしたい、という欲張りな方におススメな美容液になっています。
まとめ
今回、リポソームの特徴やメリットについてまとめてみました。
リポソーム自体が特殊で、なかなか配合が難しく高い技術力が必要になりますが、その分肌へのメリットも多いです。
普段のスキンケアに物足りなさを感じていたら、リポソーム化粧品を取り入れるのは、一つの手だと思います。
この記事で少しでもリポソームに興味を持っていただけたら幸いです。